2007年10月02日

太田記念美術館

 
9月21日から出張で埼玉に行く機会があって、東京での打ち合わせの空き時間に太田記念美術館に行ってきました。原宿駅のそばの路地を入ったところにある浮世絵の美術館です。
 
もう10年以上前かな。浮世絵に興味を持った時期がありまして、長野県小布施の北斎館や、岩松院に行ってみたりしてたことがありました。その頃1度だけこの美術館にも行ったことがあります。
 
今回の展示は、浮世絵師たちのシニア・パワー 北斎・広重・三代豊国 還暦からの挑戦
3人の超有名浮世絵師が還暦を迎えた後に産み出した作品ばかりを集めた展示です。
 
北斎は90歳まで生き、その最晩年まで作品を書き続けたことで有名。代表作の「富嶽三十六景」も72〜73歳のときの作品です。かの有名な「神奈川沖裏波」も展示されてました。
こんな斬新な構図を70を過ぎて産み出すなんてすごい!
75歳のときに刊行した「富嶽百景」のあとがきには、「70歳までに描いたものは、とるに足らぬものである。73歳でやっと生き物の骨格や草木の生まれを知った。80歳になればますます腕は上達し、90歳で奥義を極め、100歳で神技といわれるであろう」 って書いてあるそうで…
これまでにも「北斎漫画」をはじめとする素晴らしい作品を残してるんですけどね。北斎にとって90歳で死ぬのはなんとも不本意だったようです。
このパワフルさはなんなんでしょう。
 
歌川広重はもちろん「東海道五十三次」で有名ですが、広重がこの作品をものしたのは35〜36歳のとき。
今回展示されている「富士三十六景」は、もちろん北斎の「富嶽三十六景」に対抗したモノで、北斎のものより写実的。北斎の没後に発行されたそうです。
広重の作品で一番良かったのは、やっぱり「名所江戸百景 亀戸梅屋敷」。ゴッホが絶賛し、模写したと言われる作品です。構図が素晴らしい。
広重は、他の絵師に比べてぼかしの技術が優れていると言われ、これは刷り師の高い術によるもので、刷り師の名前がちゃんと入ってるんですよね。
「名所江戸百景」は62歳で亡くなった広重の最晩年の作。死ぬ間際まで素晴らしい作品を生み出していました。
 
そして三代歌川豊国。現代では、浮世絵といえば北斎・広重・歌麿(写楽?)って感じですけど、江戸時代に一番人気のあった絵師は、この人だったようです。
作品の数もすさまじく多く、歴代1位。79歳で亡くなりますが、彼もまた亡くなる直前まで精力的に作品を残します。どうなってるんだ、この爺さんたち…
正直言って、今回この展示を見に行ったのは北斎の名にひかれてだったのですが、豊国の大首絵・美人画がすごくよかった。
「浮世絵=江戸時代のポスター」っていうのがよくわかるぱっと見て心ひかれる印象に残る絵です。当時の女性たちの着物の流行や、人気の役者がわかって楽しい。
市川團十郎の系統図なんかもありましたよ。海老蔵ってすっごい家系の人なんやってあらためて認識してみたり。
 
太田浮世絵美術館では、「浮世絵を聴く」という催しもやっていて、文楽や地唄・常磐津なんかが聞けるコンサートがあります。
東京の方はぜひ。私も近くだったらぜひ行きたい!
 
 
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2007年01月18日

「彼女は嘘をついている」小泉知樹

 
いつもと同じように満員電車で通勤したある朝、突然痴漢の犯人にされた著者。身に覚えのない罪をかぶせられ、あれよあれよといううちに逮捕され、拘留。
否認を続けるが、なんと裁判で有罪判決が。そして上告するが棄却され…痴漢冤罪で実刑判決を受けた著者が、あえて実名を出して問題提起した衝撃の作品。
 
これはかなり驚きました。
テレビでこの手の特集を見たことがありますが、普通の人がこんなに簡単に犯罪者にされ、さしたる証拠があるわけでもないのに、被害者のいい分だけを信じて、実刑を言い渡される現実。
 
駅員、警察官、検察官、裁判官の誰もが「あんたやったんでしょ」を前提にことをすすめてく様は、ちょっと背筋が寒くなります。
特に控訴審で、著者が自分には手の障害があるから罪状のような行為は不可能ということを、医師の診断書を提示して証明しようとするくだりで、裁判官が事実に即さない事例をあげてでも痴漢をやれたというような追及をするところには「おい、おい!」とツッコミを入れました。
被害者と名乗る女の子もかなり酷いけど、その子をあきらかに誘導して言わせたと思われる調書を作った検察にもあきれるばかり。
 
結局この著者は、実刑判決を受け、収監されることになるのだが、仮釈放は今まで頑として認めなかった罪を認めて妥協することになるからと満期で出所し(イマドキはやくざでも満期出所は珍しいと言われたらしい)、再審に向けて思いを新たにしている。
 
この人の場合、救いは奥さんが絶対夫はやってないと信じて一緒に戦ってくれたことと、会社の人たちも彼を信じ、クビにすることなく裁判に協力してくれたこと。
痴漢冤罪で会社をクビになり、離婚なんて話も聞くのでそれはいい方たちにめぐまれたんでしょう。
 
日本の裁判って怖いねぇ。
公開中の映画「それでもぼくはやってない」(周防正行監督)を絶対見ようと思います。
 
 
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2007年01月13日

「夜のピクニック」恩田陸

 
伊坂幸太郎に続いて、人気作家シリーズ第2弾は恩田陸。
この人って女の人だったんですね。字面で男性だとばかり思ってました(恥)
この本を読む前までの知識は、「六番目の小夜子」の原作者ってことくらいでしょうか。
「六番目の小夜子」も、もちろん読んだことがあるわけではなく、これをもとにしたドラマがある(未見)ってことを知ってただけです。
 
「夜のピクニック」は、第2回の本屋大賞受賞作。(これはなんとなく知ってました)
第1回の本屋大賞受賞作の「博士の愛した数式」が大好きなんで、これはどうなんだろって思って選んでみました。

好きです。この小説。青春だなぁ…って感じ。
 
主人公の甲田貴子は、学校の伝統行事・歩行祭での小さな賭けをする。
それは誰にも内緒にしている秘密ー異母きょうだいの西脇融と話をすること…
 
登場人物の高校生たちが、どの子もキャラが立ってます。
主人公のふたりもですが、美和子・杏奈・忍といったまわりの子たちもいい。
べたべたしてなくて、ほどよい距離感を保ちながら、友達のことを思いやってる。
私は高見光一郎と杏奈の弟・順弥のキャラが好きですね。

貴子のお母さんが、美和子と杏奈に融のことを話すシーンがいいです。
「あなたたちには知っておいてほしいの」っていうお母さんの告白は、誰にも言えずに一人で抱え込んでいる娘に対する愛情がすごく感じられる。
 
そんないい子ばっかりいるか?って気もしないでもないですが、誰も悪者として描かれていないところが、この小説のいいところなのかも。
感動させようという押しつけがましいところがなく、むしろ淡々と話が進んでいく感じがこの作家のうまさなのかな?
 
恩田陸っていろんなジャンルの本を書いてるようなので、次はがらっとイメージの違うものも読んでみようと思います。
 


 
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2007年01月08日

「重力ピエロ」伊坂幸太郎

 
ずっとちゃんと本を読んでなかったせいで、最近の作家の本ってほとんど読んだことがないんですよ、私。
そこで、この際今流行ってる作家の本を読んでみようと手に取ったのがコレ。
 
伊坂幸太郎って人気ありますよねぇ。
図書館に行っても、この人の本はほとんど貸し出し中。
数ある伊坂作品の中から、これが一番有名なのかなと思って(私でも題名知ってたので)選んでみました。
この作品って直木賞の候補になってたんですよね。70年代生まれとして初ってことで。
 
前置きが長くなりましたが、感想を。
これってミステリーのジャンルに入れられるんですか?ミステリーじゃないですよね?
「謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは―。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。 」
って本の裏表紙に解説してありましたが、謎解きって言ったってすぐわかるし。
そういうものを求めて読むと、物足りないかも。
こんなんすぐ警察に捕まるやろ!って思うし。
 
でもこの小説ってそういうことじゃないんでしょうね。
家族愛の話だと思います。
設定としてはかなりヘビーな感じなんですが、兄と弟、父と子の愛情が強く感じられる物語でした。
テーマは重いけど、読後暗い気持ちにならないのは、この人の文章力なんでしょうかね。
あと、夏子さんの存在が効いてます。
 
でも「未知の感動、小説の奇跡」は褒めすぎかも。
 
伊坂幸太郎の他の作品も読んでみたいと思わせる1冊でした。
 
(読了:1月8日)
 


 
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2007年01月07日

「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」北尾トロ

いきなり長編はムリってことで、軽いものから始めようと買ったのがコレ。
「裁判員制度が始まる前に必読!」の帯にひかれて買ってみました。
 
ライターが、雑誌の企画で裁判の傍聴をするっていう内容です。
離婚、DV、強姦、詐欺、殺人、強制わいせつ…
いろんなジャンルの事件を傍聴した感想が書かれてます。
なかなか面白いです。
1回くらい傍聴ってしてみたいよなぁ…

当事者にとっては真剣なのに、興味本位っていうか野次馬根性で傍聴するのはどうよって気もしないではないですが、人間って何がきっかけでコトにはまるかわからないから、これで裁判に興味を持つ人がいるかもしれないし、こんなのもいいんじゃないかって思います。
 
ちゃんと(?)、オウムの麻原とか、元JRAの人気ジョキー田原の裁判(これにはマンガ家の本宮ひろ志氏も登場)なんかにも行ってるところがすごい。
 
傍聴席に女子高生がいると裁判官がハッスル(…いまどき小川くらいしか言わないよ)するとか、交通事故で人を死なせているのに裁判にドクロマークのトレーナーを着てくる無神経な男がいるとか、マジメな本なら書いてないようなリアリティのあるレポートはなかなかです。
 
それに傍聴マニアって人たちがいるのもはじめて知ったし…
何にでもマニアっているもんなんですね。
 
一生裁判所にはお世話になりたくないけど、人生何があるかわからないし、この本を他人事として笑ってられるうちが幸せだな、と。
 
 
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